領域について
臨床医学6は、精神神経医学Neuropsychiatry, 行動科学 Behavioral Sciences, 心身医学Psychosomatic Medicineの3ユニットを含む。人間の脳科学と行動を対象とした領域であり、「こころ」を扱う領域ともいえる。進展の著しい脳科学を臨床現場に応用するという役割を担っている。
近年、わが国では精神疾患の患者数が急増し、糖尿病、がん、脳血管疾患、虚血性心疾患よちも多く、これらの疾患とともに各地域における予防、治療、リハビリテーション体制を整えるべき5疾病に指定されている。
国際的にもメンタルヘルスの重要性に対する認識は高まっており、わが国の医学教育においても医学部4年生におけるPsychiatryの臨床実習には1か月を充てることになった。
精神医学領域で扱う疾患や状態は、いわゆる「見える」化しづらく、多の疾患領域との関連も乏しいため、成書(標準精神医学などの教科書)を熟読ししっかりと体系立てて理解しておくことが必要である。
サブ領域は、臨床医学6 のみからなる。
医学モデルコアカリキュラムA、B、C、Dに相当する。
領域の評価について
評価は、精神神経医学80%、行動科学10%、心身医学10%の割合とする。すべてのサブ領域が、GPA評価でグレードC以上で、この領域が合格となる。
試験範囲はいわゆる医師国家試験出題基準の中で、精神医学に特に関連が深い項目のすべてである(具体的には標準精神医学内の資料を参照されたい)。記述式筆記試験を行う。場合により口頭試問で評価を行うこともある。
(知識面)包括評価は、科目終了時に筆記試験を持って行う。論述問題を中心とし、知識のみならず講義で示した診療技術の習得度を筆記試験で問うべく出題する。また、適宜、形成評価を講義内に行う。
(態度)講義中の態度は加点対象としないが、減点対象とはなる。
サブ領域について
サブ領域の学修目標は、進展の著しい脳科学を臨床現場に応用するうえでの、基本的な知識を身につけ、その学修を発展させ、臨床場面で応用できるようになる。
医学教育モデルコアカリキュラムでは、
A-4
B-1
B-3
B-4
C-5
D-15
が該当する。
当サブ領域は精神神経医学、心身医学、行動科学の3ユニットから構成される。概要は以下のとおりである。
精神神経医学(20回)
精神神経医学とは、広義には脳機能の表現形態としての精神心理・行動現象を、狭義には身体器官である脳の構造、機能を研究し、共同社会の中で人間の幸福を追求する学問である。したがって人間関係のあり方を考える心理学、社会学、文化人類学、哲学などを考慮しなければならない。一方脳の器質、機能を解剖学、神経病理学、神経生理学、神経生化学、神経薬理学、神経内分泌学、神経免疫学、分子生物学、認知科学など身体医学の方法論を採用する。
心身医学(4回)
身体疾患の多くは、心理・社会的ストレスに影響を受ける。さらに、疾病に陥ったこと、医療を受けることによって、種々の心理的な反応が惹起される。ここでは、心理的要因が病態に深く関わっている身体疾患、心理的要因が身体疾患におよぼす影響、精神疾患の身体症状などについて学ぶ。
行動科学(6回)
行動とは、人間や動物が内的外的刺激に対して示す反応の総称を指す。行動科学とは、社会文化、心理社会、行動、生物医学 に関する知識と技術を集積統合した学際的な学問であり、健康や疾病の理解だけでなく、疾病の 予防、健康の促進、病因の解明、診断、治療、リハビリテーションにも役立てられている。
ここでは、医学や医療の領域と関連する脳機能を含めた人間行動のメカニズム、行動変容への技術、動機づけなどについて学ぶ。
ユニット名称: 精神神経医学 (2021年度)
ユニット責任者 | 桂川 修一 |
ユニット対象学年 | 3 |
ユニット授業期間 | |
ユニット時限数 | 20 |
ユニット分類 | 講義 |
ユニットについて
精神現象の捉え方、精神疾患の症状、治療法、社会復帰の支援方法の概略を説明する。精神疾患であるという考え方を基本にすえ、EBMに沿った説明をするが、病む人は個人であることを十分に認識し、narrativeな診察法の大切さを強調したい。
講義は日本語で行ない、教科書も日本語で書かれたものとする。ただし、精神医学の症状記載には伝統的に国際的にもドイツ語フランス語による記載や表記が残されているので、併せて理解することが望ましい。
また、診断分類は、国際疾病分類第11版を標準とするが、アメリカ精神医学会のDSM-5も適宜参照されたい。
受講前に必要とされる知識及び技能・態度
指定教科書(標準精神医学第8版、尾崎・三村・水野・村井編著、医学書院刊)を予習しておくこと。各講義に対して2時間程度の予習。1,2年次の神経解剖などの復習も行う。
ユニットの評価について(フィードバック含む)
臨床医学6の80%に相当する。
本試験は、主に論述式筆記試験のみを行う。
試験範囲はいわゆるコアカリキュラムの基準の中で、精神医学に特に関連が深い項目のすべてである(具体的には標準精神医学内の資料を参照されたい)。講義時間は限られており、精神神経医学の全般を論じることはできない。講義で触れられていない部分や他ユニットで論じられた精神神経医学関連領域からの出題もありうる。
20%分は英語問題である。
試験結果は臨床医学6としての合否結果のみ公表する。
試験問題はプールし、再出題することもあるので公表しない。
指定教科書他
1) 標準精神医学 第8版 医学書院 尾崎・三村・水野・村井編著 令和3年度に新たな改訂がなされたわが国の代表的な精神医学の教科書である。
2) Psychiatry Fourth edition OXFORD Ed.by John GEDDES, Jonathan PRICE, Rebecca MCKNIGHT
Amazon Kindle版の購入をおすすめします。
英国における学生向け精神科教科書。
3) Essential Psychiatry Eds Robin Murray et al. Cambridge Univ Press
英語圏(イギリス)で広く使われている教科書、研修医レベル、バランスよく最新の知見まで網羅している) 「Comprehensive Textbook of Psychiatry」Eds. Kaplan , Sadock Williams & Wilkins 英語圏(アメリカ)で広く使われている世界を代表する教科書である。
参考書
精神科リュミエール 中山書店など