領域名称: 臨床医学6 (2024年度)

領域責任者根本 隆洋

領域について

 臨床医学6は、精神神経医学Neuropsychiatry, 行動科学 Behavioral Sciences, 心身医学Psychosomatic Medicineの3ユニットを含む。脳科学と精神および行動を対象とした領域であり、「こころ」を扱う領域ともいえる。近年発展の著しい脳科学の知見を臨床現場に応用するという役割を担っている。
 本邦において、糖尿病、がん、脳血管疾患、虚血性心疾患に精神疾患が加えられ5大疾病に指定されているが、中でも精神疾患はその患者数と増加率において首座を占め、最も重要な疾患であるといっても過言ではない。
 世界的にもメンタルヘルスの重要性は高まっており、わが国の医学教育においても、医学部4年生における精神神経科の臨床実習には1か月を充てることになった。
 精神医学領域で扱う疾患や状態は、一般身体科領域からみると独特で「見える」化しづらいともいえ、事前に成書(「標準精神医学」などの教科書)を熟読し、概要を掴んでおくことが必要である。
 サブ領域は臨床医学6のみからなる。また、医学モデルコアカリキュラムA、B、C、Dに相当する。

領域の評価について

 評価は精神神経医学80%、行動科学10%、心身医学10%の割合とする。すべてのサブ領域においてGPA評価グレードC以上の達成にて、この領域の合格となる。
 試験範囲は、医師国家試験出題基準の中で精神医学に関連が深い項目のすべてである(具体的には「標準精神医学」内の資料を参照されたい)。記述式筆記試験を行うが、場合により口頭試問で評価を行うこともある。
 (知識面)包括評価は科目終了時に筆記試験をもって行う。論述問題を中心とし、知識のみならず講義で示した診療技術についても出題する。また、適宜形成評価を講義内に行う。
 (態度)講義中の態度は加点対象としないが、減点対象とはなりえる。

サブ領域名称: 臨床医学6 (2024年度)

サブ領域責任者根本 隆洋

サブ領域について

サブ領域の学修目標は、進展の著しい脳科学を臨床現場に応用するうえでの、基本的な知識を身につけ、その学修を発展させ、臨床場面で応用できるようになる。
医学教育モデルコアカリキュラムでは、
A-4
B-1
B-3
B-4
C-5
D-15
が該当する。

当サブ領域は精神神経医学、心身医学、行動科学の3ユニットから構成される。概要は以下のとおりである。

精神神経医学(20回)
精神神経医学とは、広義には脳機能の表現形態としての精神心理・行動現象を、狭義には身体器官である脳の構造、機能を研究し、共同社会の中で人間の幸福を追求する学問である。したがって人間関係のあり方を考える心理学、社会学、文化人類学、哲学などを考慮しなければならない。一方脳の器質、機能を解剖学、神経病理学、神経生理学、神経生化学、神経薬理学、神経内分泌学、神経免疫学、分子生物学、認知科学など身体医学の方法論を採用する。

心身医学(4回)
身体疾患の多くは、心理・社会的ストレスに影響を受ける。さらに、疾病に陥ったこと、医療を受けることによって、種々の心理的な反応が惹起される。ここでは、心理的要因が病態に深く関わっている身体疾患、心理的要因が身体疾患におよぼす影響、精神疾患の身体症状などについて学ぶ。

行動科学(6回)
行動とは、人間や動物が内的外的刺激に対して示す反応の総称を指す。行動科学とは、社会文化、心理社会、行動、生物医学 に関する知識と技術を集積統合した学際的な学問であり、健康や疾病の理解だけでなく、疾病の 予防、健康の促進、病因の解明、診断、治療、リハビリテーションにも役立てられている。
ここでは、医学や医療の領域と関連する脳機能を含めた人間行動のメカニズム、行動変容への技術、動機づけなどについて学ぶ。

ユニット名称:[MM642-301J]精神神経医学(2024年度)

ユニット責任者根本 隆洋
ユニット対象学年3 ユニット授業期間 ユニット時限数20 ユニット分類講義

ユニットについて

本ユニットにおいては、精神現象の捉え方、精神疾患の症状、治療法、社会復帰の支援方法の概略を説明する。
系統講義では1コマ1講師により、指定された教科書に沿って重要な範囲を中心に講義を行う。具体的な内容は以下に示す。
モデルコアカリキュラムA-4、B-1、B-3、B-4、C-5、D-15に従って以下説明する。
精神科医学において、診断や治療をする際には患者の心理・社会的背景を重視することが踏まえ判断することが望まれる。A-4に示すように、患者およびその家族との良好な関係を築き、意識決定を支援するコミュニケーション能力が重要であり、それを説明できることとする。
B-1の集団に対する医療では根拠に基づいた医療の理解を深めるためにICD-10を用いて診断に至る手法を学び説明できることとする。B-3に示す医学研究と倫理、特に倫理においては、精神科は非同意入院の制度がありしばしば倫理的な問題が議論されることがある。そういった医療倫理に関して精神科医学を学ぶことで説明できることとする。B-4としては精神科医療の中で制度化されている社会的サービスを理解し、説明できることとする。
C-5においては人の行動と心理を理解するための基礎的な知識を行動療法、認知行動療法、森田療法などの講義を通じて学び説明できることとする。
D-15に示すように、精神と行動の障害に対して、児童・思春期から老年期のライフステージに応じた病態生理、診断、治療を理解し、良好な患者と医師の信頼関係に基づいた全人的医療を学ぶことがねらいである。
①D-15-1の診断と検査の基本に関しては、患者医師間の良好な信頼関係に基づく精神科面接の基本を説明できること、また、精神科診断を説明できることとする。
②D-15-2の症候に関しては、不安・躁うつをきたす精神障害を列挙し、その鑑別診断を説明できること。意識障害、不眠、幻覚妄想を来す精神障害を説明できること。その他心理的ストレスと関係している疾患を列挙し鑑別できることとする。
③D-15-3の疾患・障害に関しては、個々の様々な精神科疾患に関して病態と症候を説明できることとする。
講義内容の理解をより深めることを目的に、授業前に指定教科書の指定された範囲について予習(60分)し授業に臨むこと。

受講前に必要とされる知識及び技能・態度

指定教科書(標準精神医学第9版 医学書院 2024年2月 ISBN:978-4-260-05334-1)を予習しておくこと。各講義に対して60分程度の予習。

ユニットの評価について

臨床医学6の80%に相当する。
講義内容のフィードバックに関しては各講義内で問題を提示し各自回答後説明するなどを行っている。
本試験は、論述式筆記試験のみを行う。
試験範囲はいわゆるコアカリキュラムの基準の中で、サブ領域単位で評価する。(具体的には標準精神医学内の資料を参照されたい)。講義時間は限られており、精神神経医学の全般を論じることはできない。講義で触れられていない部分や他ユニットで論じられた精神神経医学関連領域からの出題もありうる。
20%分は英語問題である。
試験結果は臨床医学6としての合否結果のみ公表する。
試験問題はプールし、再出題することもあるので公表しない。

指定教科書他

1) 標準精神医学 第8版 医学書院 尾崎・三村・水野・村井編著. 2021年3月 ISBN:978260042918 
令和3年度に新たな改訂がなされたわが国の代表的な精神医学の教科書。

2) Psychiatry Fourth edition OXFORD Ed.by John GEDDES, Jonathan PRICE, Rebecca MCKNIGHT. 英国における学生向け精神科教科書。

3) Essential Psychiatry Eds Robin Murray et al. Cambridge Univ Press.
英語圏(イギリス)で広く使われている教科書、研修医レベル、バランスよく最新の知見まで網羅している) 「Comprehensive Textbook of Psychiatry」Eds. Kaplan , Sadock Williams & Wilkins 英語圏(アメリカ)で広く使われている世界を代表する教科書である。

授業日程一覧(ユニット名称:精神神経医学) (2024年度)

コマ数形態授業タイトル
1 講義精神医学総論
2 講義精神症候学
3 講義精神医学的診察・検査・診断
4 講義統合失調症
5 講義社会実装精神医学
6 講義器質・症状性精神障害
7 講義気分障害・物質関連障害
8 講義生物学的精神医学・脳科学
9 講義リエゾン精神医学・産業精神医学
10 講義老年精神医学と認知症
11 講義児童思春期精神医学
12 講義精神科治療学1(身体・薬物療法)
13 講義精神科治療学2(精神療法)
14 講義精神医療と社会
15 講義てんかん
16 講義精神保健福祉法・司法精神医学
17 講義神経症性障害とストレス関連障害
18 講義パーソナリティ障害と行動異常
19 講義学校保健・遠隔精神医療
20 講義精神保健福祉行政
評価臨床医学6(10:00~11:30・3実)
評価臨床医学6(再)(10:00~11:30・3実)
評価臨床医学6(最終)(10:00~11:30・多目1)