領域名称: 生体物質の科学 (2024年度)

領域責任者中野 裕康

領域について

 臨床医療で直接必要とされる知識と技能の修得のみならず、臨床医学に至るまでの基礎医学教育を成立・推進させるためにも、1−2年次における教育の重要性は論を待たない。本領域「生体物質の科学」は化学および生化学内容に立脚し、他の領域とともに医学部低学年教育の根幹をなすものとして位置づけられる。
 
 医学教育モデル・コア・カリキュラムは「PR プロフェッショナリズム」と「PS 専門知識に基づいた問題解決能力」に該当する。
 
 本領域は以下の生体物質の科学①、②、③より構成される。さらにそれぞれのサブ領域は、右に記載した2〜3のユニットより構成される。
 「生体物質の科学①」(生体無機化学、生体有機化学I、遺伝生化学I):無機化学から有機化学の基礎と、遺伝学の基礎を理解する。
 「生体物質の科学②」(生体有機化学II、代謝生化学I):有機化学の応用と、糖代謝やヌクレオチド代謝、それらの反応を触媒する酵素、補酵素、ビタミンなどを理解する。
 「生体物質の科学③」(代謝生化学II、遺伝生化学II):アミノ酸代謝と脂質代謝を理解し、さらにサブ領域②とサブ領域①の知識をそれぞれ統合させて代謝を包括的に理解し、また最先端のゲノム医学、遺伝学を理解する。
 
 
 それぞれのサブ領域では、まず生体関連物質と代謝を学ぶための土台となる生体無機化学、生体有機化学I, IIを学び、その後生体を構成する主な成分である糖質、脂質、アミノ酸の構造や合成、分解のメカニズムやヌクレオチド代謝を代謝生化学I、IIで学ぶ。さらにDNA複製や遺伝子発現調節機構を遺伝生化学I, IIで学ぶ。
 

領域の評価について

 領域「生体物質の科学」の評価は、それぞれ前期の期末試験帯に論述形式(必要に応じてMCQ形式も含む)の筆記試験を組み合わせ、サブ領域①、②、③の試験、「生体物質の科学実習」のレポートや実習態度などの成績の総合評価により行う。その領域に属するすべてのサブ領域の評価が、 GPA評価でグレードC以上で、この領域が合格となる。

サブ領域名称: 生体物質の科学③ (2024年度)

サブ領域責任者中野 裕康

サブ領域について

サブ領域「生体物質の科学③」は、これまで学んできたサブ領域「生体物質の科学②」に加えて、アミノ酸代謝・脂質代謝について学び、糖代謝・脂質代謝・アミノ酸代謝を総合的に理解をすることを目的とする。またサブ領域「生体物質の科学①」で学んだ遺伝学の基礎を踏まえて、最新の遺伝学およびゲノム医学を理解するための基本的な知識の習得を目指す。

講義は以下の2ユニットで構成され、医学教育モデル・コア・カリキュラムでは「PS-01 基礎医学」が該当する。
1)代謝生化学II
2)遺伝生化学II

代謝生化学IIでは、アミノ酸・タンパク質の合成と分解、脂質の構造と機能・合成と分解、ヘム・ポルフィリンの代謝や酸化ストレスを理解し修得する。また、細胞傷害の病因や形態および様々な代謝障害を理解する。さらにこれまでに学んだ糖代謝・脂質代謝・アミノ酸代謝を総合的に理解し習得する。

遺伝生化学IIでは、正常細胞における遺伝子発現、細胞周期、シグナル伝達の調節機構を学修し、その機構の破綻によってがんなどが発症する機構を学ぶ。また、ゲノムの個体差により疾患感受性や薬剤の有効性・安全性が異なることを理解するほか、PCR法や核酸の塩基配列の決定法などの遺伝子解析技術を習得する。
これらの講義を通して、生化学、遺伝学、分子生物学などの知識を有機的に統合し、これから学ぶことになる病気の根底にある病態を理解するための確固たる基礎知識の構築を目指す。

ユニット名称:[MM603-103J]遺伝生化学Ⅱ(2024年度)

ユニット責任者山﨑 創
ユニット対象学年1 ユニット授業期間3期 ユニット時限数5 ユニット分類講義

ユニットについて

本ユニットでは、「遺伝生化学I」での学修内容を発展させ、遺伝子の変異によってがんなどの疾患の発症につながる機構を学ぶ。正常細胞における遺伝子発現やシグナル伝達の調節機構を学修し、その機構の破綻によって病態が形成される機構を学ぶ。また、ゲノムの個体差により疾患感受性や薬剤の有効性・安全性が異なることを理解するほか、PCR法や核酸の塩基配列の決定法などの遺伝子解析技術を学ぶ。

対応する「医学教育モデル・コア・カリキュラム (令和4年度版)」の項目は次の通りである。
PS-01-01-06:メンデルの法則、ミトコンドリア遺伝、エピゲノム修飾(インプリンティングを含む)及び多因子遺伝について理解している。
PS-01-01-07:遺伝型と表現型の関係について理解している。
PS-01-01-08:染色体の構造を理解し、ゲノムと染色体及び遺伝子の構造と関係性、体細胞分裂及び減数分裂における染色体の挙動について理解している。
PS-01-01-09:DNAの複製と修復、DNAからRNAへの転写、タンパク質合成に至る翻訳を含む遺伝情報の発現及び調節(セントラルドグマ)について理解している。
PS-01-01-10:染色体分析・DNA配列決定を含むゲノム解析技術について概要を理解している。
PS-01-01-11:ゲノム編集技術とその応用について概要を理解している。
PS-01-02-04:情報伝達の種類と機能について理解している。
PS-01-02-05:受容体の種類・細胞内局在・機能、受容体による細胞内シグナル伝達過程について理解している。
PS-01-02-06:液性因子による細胞間情報伝達(自己分泌、傍分泌、内分泌)について理解している。
PS-01-03-30:がん免疫に関わる細胞性機序について理解している。
PS-01-04-01:ゲノムの多様性に基づく個体の多様性について理解している。
PS-01-04-02:単一遺伝子疾患、染色体異常による疾患、ミトコンドリア遺伝子の変異による疾患を挙げ、遺伝様式を含め理解している。
PS-01-04-03:多因子疾患における遺伝要因と環境要因の関係について理解している。
PS-01-04-04:薬剤の有効性や安全性とゲノムの多様性との関係について概要を理解している。
PS-01-04-20:がんの原因や遺伝子変化について概要を理解している。
PS-01-04-24:がんの免疫系による排除機構について概要を理解している。
PS-03-01-03:生殖細胞系列変異と体細胞変異の違い、遺伝学的検査の目的と意義について理解している。

受講前に必要とされる知識及び技能・態度

高校卒業レベル相当の生物学と化学の知識および、遺伝生化学Ⅰでの学修内容を必要とする。染色体、ゲノム、遺伝子の概念や、DNAの複製と遺伝情報の発現 (転写と翻訳)について概説できるように整理しておくこと (15分)。

ユニットの評価について

本ユニットでは、Ⅲ学期末の試験帯に実施されるサブ領域「生体物質の科学③」の定期試験で90%、各講義時間での小テストで10%の比率で評価する。定期試験は、ユニット「代謝生化学II」 (得点配分60点)と合わせて実施し、本ユニットの得点配分は40点である。原則として可(レベルC)以上を合格基準とするが、サブ領域全体で不合格の場合は、本ユニットも再試験となる。評価の詳細は、「教育の評価」を参照すること。定期試験の評価開示後はオフィスアワーに個別の質問を受ける。

指定教科書他

A. エッセンシャル細胞生物学(原書第5版)、中村桂子/松原謙一/榊佳之/水島昇 監訳、南江堂、2021 (ISBN: 978-4-524-22682-5)
B. カラーイラストで学ぶ集中講義「生化学」改訂第2版、鈴木敬一郎ら、メディカルビュー社、2017 (ISBN: 978-4-7583-0098-8)



授業日程一覧(ユニット名称:遺伝生化学Ⅱ) (2024年度)

コマ数形態授業タイトル
1 講義遺伝子発現調節
2 講義シグナル伝達
3 講義がん関連遺伝子
4 講義ゲノム医学
5 講義遺伝子解析技術
評価生体物質の科学③(10:00~11:00・3実)
評価生体物質の科学③(再)(10:00~11:00・2実)