領域について
病態とは生体の通常の生理的構造と機能からの逸脱であり、外因によるもの、内因によるもの、人工的修飾によるものが含まれる。「病態の科学」では、「生体物質の科学」「生体の構造」「生体の機能」で修得した生体機能の理解を、病態の理解・考察に結びつけてゆく。具体的には、病態の生ずる機序、病態の時間的空間的連鎖、それらを修飾する手段としての薬物の基本的役割に関する知識・技能・態度を修得する。これは臨床医学への橋渡しとなり、臨床医学を学ぶ上での基盤となる。
本領域は、「病態の科学①」「病態の科学②」および「病態の科学実習」の3つのサブ領域から構成される。「生体物質の科学」「生体の構造」「生体の機能」および「病態の科学①」で学修した内容を踏まえて「病態の科学②」を学修することで、臨床医学を学修する基盤を完成させる。
『病態の科学』では医学教育モデル・コア・カリキュラムの「C 医学一般」に関連する事項を学修するが、一部必要に応じて「D 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療 」と「E 全身に及ぶ生理的変化、病態、診断、治療」の内容にも触れる。
講義
上記到達目標に挙げた項目について講義を行う。各分野とも次々に新しい知見が蓄積されているが、今後の発展にも対応できるように基本的な事項について現時点での考え方を学び、3年次以降で学ぶ種々の疾患にも対応できるよう理解を深める。
また「病態の科学1」「病態の科学2」の横断的な連関を概観するために、年度の最初と最後に「病態の科学概論」として統合講義を行う。これは幾つかの具体的な疾患を対象とした講義を各分野が共同で行うものであり、各自の学修意欲の喚起や学修内容の整理に活かす。
講義を聴いただけでは知識や考え方は身につかない。講義の際に配布されるプリントはあくまで概略なので、成書でじっくりと勉強すること。
実習
実習では実際の生体材料を使用したり、コンピュータシミュレーションにより、座学で学んだことをより深く理解、修得する。受け身でなく主体的に学ぶことが重要である。
領域の評価について
領域:『病態の科学』を構成する各ユニットの講義回数の2/3以上の出席、演習・実習は実習回数の4/5以上の出席が必須である。
上記が満たされない場合、講義、演習においては当該領域を構成するサブ領域の定期試験の受験資格の喪失、実習においては未修了判定となる。
科目試験はサブ領域ごとに行う。サブ領域を構成する各ユニットについて、シラバスに明示された配点で評価を行い、全ユニットの評価の合計を100点としてサブ領域の評価とする。
サブ領域と各ユニットの評価が下記の場合を合格とする。
①サブ領域の評価が可(グレードC)以上で、ユニットの評価がすべてレベルC以上の場合
②サブ領域の評価が可(グレードC)以上で、ユニットの評価でレベルDが1つまでの場合
下記に該当する場合は不合格とする。
①サブ領域の評価が不可(グレードDまたはF)の場合
②サブ領域の評価がC以上であっても、ユニットの評価でレベルDが2つ以上、あるいはレベルFが1つ以上ある場合
形成評価について: 学修内容の修得度の確認をするために適宜行う。各自の学修の参考にすること。
ユニット名称: 病理学 (2021年度)
ユニット責任者 | 三上 哲夫 |
ユニット対象学年 | 2 |
ユニット授業期間 | 2期 |
ユニット時限数 | 17 |
ユニット分類 | 講義 |
ユニットについて
病理学とは広義には治療学を含むあらゆる医学的事項について研究する病態生物科学であるが、一般的には「疾病の成り立ち(本質)を解明しようとする基礎医学」と捉えることができる。その方法論としては剖検、動物モデル解析、遺伝子解析、タンパク解析、微生物学的解析などあらゆる手法を動員するが、その基盤は肉眼的・顕微鏡的な形態変化の観察にある。
一方、形態の観察から得られる所見は、患者の予後予測や治療方針の選択に有用な情報となる。これは病理学の臨床医学としての側面である。
このように病理学は基礎と臨床にまたがる科目である。また現在、万の単位で名称が与えられているヒトの疾患を明快に分類・整理するためには病理学総論の習得が必須である。病理学の理解は全臨床医学の理解の基となる。
受講前に必要とされる知識及び技能・態度
A. 「生体物質の科学」「生体の構造」「生体の機能」で学んだ知識。
B. 観察したことを、客観的に分析、記録を残す姿勢。
C. 自学自修の態度。
ユニットの評価について(フィードバック含む)
1. 形成評価として講義に対してポストテストを行うことがある。ユニットの成績には反映させないが、学修内容の習得度の自分で確認することを目的に行う。各自の学修の参考にして欲しい。
2. 第2期試験帯に行う試験によって評価をする。記述式(文章で答える、一問一答形式、穴埋めなど)とMCQ形式の比は、およそ4:1
また、授業期間内に課題レポートを課す(予定課題は3つ)。
試験とレポートの評価の比率は、9:1とする。
3. 「病理学」において身につけるべきmedical termsを提示する。期間内に「病態の科学概論」の試験として期間内に試験を行う。サブ領域の成績判定における扱いは別に定める。
4. 定期試験問題は、試験終了後に学生側の求めがあれば公開する。クラスの代表を通して連絡をとること。
指定教科書他
教科書はまず、
1.豊國、高橋監訳 ロビンス 基礎病理学 原書第10版:丸善出版、東京、2018 とする。
日本の教科書では比較的最近改版されたものとして下記を挙げておく。
2.坂本、北川、仁木編 標準病理学 第4版:医学書院、東京、2010
組織病理アトラスは下のいずれかを実習時必携とすること。
3. 深山、小田、坂本他 編 組織病理アトラス 第6版:文光堂、東京、2015
4. 深山編 病理組織マップ&ガイド:文光堂、2014
5.坂本、北川、菅野著 組織病理カラーアトラス 第2版:医学書院、東京、2015
3は長年にわたって定評のあるものの待望の新版で、4,5よりも多数の疾患が取り上げられており、写真、文とも充実している。マクロ写真も前の版に比べて増えている。医学生には充分すぎる内容で、卒後の専門医の勉強にも使える内容となっている。ただし価格は高い。
4,5はむしろ医学生向けのアトラスとなっており、4は出版年が新しく、マクロとミクロ、正常組織と病理組織を対比させながら提示しており、理解しやすい。5は2と同じ出版社から。組織写真の他、図表や箇条書きにされたポイントなど教育的内容も含む。
日本語より英語の方が得意という学生は、原書に挑戦してみるのもよい。ただし上記1を買うと、Web上で原書本文に正規にアクセスできるので、現代では紙の本として持つ価値は薄れたかもしれない。
6. Kumar, Abbas, Fausto, Mitchell; Robbins Basic Pathology 9th Edition: Saunders/ Elsevier, Philadelphia, 2013
7. Klatt; Robbins and Cotran Atlas of Pathology 2nd Edition: Saunders/ Elsevier, Philadelphia, 2010
上記5がテキスト、6が写真が豊富なアトラスという構成。
8. Davi-Ellen Chabner; Medical Terminology, A short course, 7th Edition: Elsevier, 2015 M1の医学英語入門およびM2の基礎医学英語で使用した教科書。基本的な病名は英語でも身に着けておく必要があるため、適宜参照して欲しい。