領域名称: 病態の科学 (2024年度)

領域責任者杉山 篤

領域について

 病態とは生体の通常の生理的構造と機能からの逸脱であり、外因によるもの、内因によるもの、人工的修飾によるものが含まれる。「病態の科学」では、「生体物質の科学」「生体の構造」「生体の機能」で修得した生体機能の理解を、病態の理解・考察に結びつけてゆく。具体的には、病態の生ずる機序、病態の時間的空間的連鎖、それらを修飾する手段としての薬物の基本的役割に関する知識・技能・態度を修得する。これは臨床医学への橋渡しとなり、臨床医学を学ぶ上での基盤となる。
 
 本領域は、「病態の科学①」「病態の科学②」および「病態の科学実習」の3つのサブ領域から構成される。「生体物質の科学」「生体の構造」「生体の機能」および「病態の科学①」で学修した内容を踏まえて「病態の科学②」を学修することで、臨床医学を学修する基盤を完成させる。
 
 『病態の科学』では医学教育モデル・コア・カリキュラムの「C 医学一般」に関連する事項を学修するが、一部必要に応じて「D 人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療 」と「E 全身に及ぶ生理的変化、病態、診断、治療」の内容にも触れる。
 
 講義
 上記到達目標に挙げた項目について講義を行う。各分野とも次々に新しい知見が蓄積されているが、今後の発展にも対応できるように基本的な事項について現時点での考え方を学び、3年次以降で学ぶ種々の疾患にも対応できるよう理解を深める。
 また「病態の科学1」「病態の科学2」の横断的な連関を概観するために、年度の最初と最後に「病態の科学概論」として統合講義を行う。これは幾つかの具体的な疾患を対象とした講義を各分野が共同で行うものであり、各自の学修意欲の喚起や学修内容の整理に活かす。
 講義を聴いただけでは知識や考え方は身につかない。講義の際に配布されるプリントはあくまで概略なので、成書でじっくりと勉強すること。
 
 実習
 実習では実際の生体材料を使用したり、コンピュータシミュレーションにより、座学で学んだことをより深く理解、修得する。受け身でなく主体的に学ぶことが重要である。

領域の評価について

 領域:『病態の科学』を構成する講義科目であるサブ領域(病態の科学①、病態の科学➁)は、講義回数の2/3以上の出席、実習科目である病態の科学実習サブ領域は実習回数の4/5以上の出席が必須である。
 上記が満たされない場合、講義においては当該領域を構成するサブ領域の定期試験の受験資格の喪失、実習においては未修了判定となる。
 
 科目試験はサブ領域ごとに行う。サブ領域を構成する各ユニットについて、シラバスに明示された配点で評価を行い、全ユニットの評価の合計を100点としてサブ領域の評価とする。
 
 サブ領域と各ユニットの評価が下記の場合を合格とする。
 ①サブ領域の評価が可(グレードC)以上で、ユニットの評価がすべてレベルC以上の場合
 ②サブ領域の評価が可(グレードC)以上で、ユニットの評価でレベルFが1つまでの場合
 
 下記に該当する場合は不合格とする。
 ①サブ領域の評価が不可(グレードDまたはF)の場合
 ②サブ領域の評価がC以上であっても、ユニットの評価でレベルFが2つ以上、あるいはレベルF-が1つ以上ある場合
 
 形成評価について: 学修内容の修得度の確認をするために適宜行う。各自の学修の参考にすること。

サブ領域名称: 病態の科学 実習 (2024年度)

サブ領域責任者近藤 元就

サブ領域について

病態が生じる要因やその結果について「病態の科学①」「病態の科学②」で学修した内容の一部を実際に体験することにより、座学では伝えきれない内容について補完するとともに、学修した諸事項の連関について理解を深めてもらう。

病態の科学実習は「病態の科学実習I(免疫学)」「病態の科学実習II(微生物学・薬理学)」および「病態の科学実習III(病理学)」から構成される。
各ユニットの学修目標は以下の通りである。

病態の科学実習I(免疫学):抗原抗体反応の特性や、それを用いた免疫応答および自己免疫疾患の解析を通して、生体防御機構への理解を深める。(医学教育モデル・コア・カリキュラム中項目:C-3(小項目C-3-2)

病態の科学実習II(微生物学・薬理学):微生物学では、感染症の予防・診断・治療に役立つ知識と手技の基礎を修得し、感染症の機序や疫学について理解を深める。薬理学では、疾患概念および臨床における薬物治療の意義を理解し、薬物動態および薬理作用についてシミュレーションなどを通して理解を深める。(医学教育モデル・コア・カリキュラム中項目:C-3(微生物学:小項目C-3-1)(薬理学:小項目C-3-3))

病態の科学実習III(病理学):病理学で学修した基本的病変について理解を深めるとともに、病理学的手法について理解し、所見を考察する練習をする。(医学教育モデル・コア・カリキュラム中項目:C-4(小項目C-4-2からC-4-6まで)

実習はすべて出席することを原則とする。実習の評価は、規定の実習回数の4/5以上出席したものに対してのみ行われる。再実習は行わない。公欠などやむを得ない欠席者に関しては扱いを別に定める。実習未了者は、次年度に再び実習に参加し、履修しなければならない。

ユニット名称:[MM613-202J]病態の科学実習Ⅰ(免疫学)(2024年度)

ユニット責任者近藤 元就
ユニット対象学年2 ユニット授業期間実習 ユニット時限数18 ユニット分類実習

ユニットについて

•免疫系は、主として獲得免疫細胞のはたらきにより、多種多様な病原体に対処することができる。その対処過程はさまざまな細胞や因子が関与する複雑なものであるが、獲得免疫反応の特徴や働きの一部については、比較的容易に可視化することができる。本ユニットでは、そのようないくつかの免疫反応について検出方法と応用を学ぶことを通して、獲得免疫の特徴である抗原認識特異性や免疫寛容獲得の機序、さらにはそれらの異常に起因する自己免疫疾患発症機序への理解を深める。
•各実習前には、実習書の該当する部分をあらかじめ読んで手順を確認し、実習を滞りなく進められるよう準備すること。また関連する知識について、教科書や講義プリントの該当箇所を読んでおくこと。これらの事前準備に30分以上かけることが望ましい。また一部の実習では実験動物を用いるが、動物愛護法の精神に則ることはもちろんのこと、生命の尊厳を最大限尊重する観点から、実験動物の使用数および与える苦痛は最小化することが求められる。そのため実習手順の予習を必ず行い、実験動物に対する実験操作を迅速かつ円滑に行えるよう特段の準備して臨むこと。
•本ユニットは対面での実習を原則とする。社会的状況により対面での実施が困難な場合、対応も含めて別途教育ポータルで通知する。
•本ユニットは、医学教育モデル・コア・カリキュラムの小項目C-3-2に該当するが、適宜他の項目にも触れる。
•実習であるため、17:20で終了しない場合も多い。注意のこと。

受講前に必要とされる知識及び技能・態度

•これまでに学習した免疫学に関する知識、およびそれを実習や新たな知識に関連付けて考察しようとする姿勢。
•生命に対する畏敬と、実習で用いる実験動物に対する深い感謝の念。
•実験手順を注意深く理解したうえでピペット操作等の基本的実験手技を丁寧に行う姿勢と意欲的な取り組み。

ユニットの評価について

免疫学分野:本ユニットの評価は、サブ領域の評価の17%を占める。
評価は実習終了後に行うテスト(実習項目6回中4回、全体の67%)およびレポート(同6回中2回、33%)で行う。尚、レポートは適宜評価を付けて返却し、フィードバックを行う。

指定教科書他

1. 教科書
宮坂昌之、小安重夫、椛島健治 編集 「標準免疫学、第4版」 医学書院、2021 ISBN 978-4-260-04238-3

2. 参考書
A. 中尾篤人 監訳 「基礎免疫学 原著第6版」 ELSEVIER、2020  ISBN 978-4-860-34661-4
B. 笹月健彦・吉開泰信 監訳 「免疫生物学 原書第9版」 南江堂、2019 ISBN 978-4-524-25115-5  (世界的に広く用いられている教科書の日本語訳)

授業日程一覧(ユニット名称:病態の科学実習Ⅰ(免疫学)) (2024年度)

コマ数形態授業タイトル
1 実習免疫学実習.1-1 抗ヒツジ赤血球抗体の特異性と抗体価の測定
2 実習免疫学実習.1-2 抗ヒツジ赤血球抗体の特異性と抗体価の測定
3 実習免疫学実習.1-3 抗ヒツジ赤血球抗体の特異性と抗体価の測定
4 実習免疫学実習.2-1 抗体特異性の解析
5 実習免疫学実習.2-2 抗体特異性の解析
6 実習免疫学実習.2-3 抗体特異性の解析
7 実習免疫学実習.3-1 T細胞とB細胞の検出
8 実習免疫学実習.3-2 T細胞とB細胞の検出
9 実習免疫学実習.3-3 T細胞とB細胞の検出
10 実習免疫学実習.4-1 抗体産生細胞の検出
11 実習免疫学実習.4-2 抗体産生細胞の検出
12 実習免疫学実習.4-3 抗体産生細胞の検出
13 実習免疫学実習.5-1 血清補体価 (CH50) 測定
14 実習免疫学実習.5-2 血清補体価 (CH50) 測定
15 実習免疫学実習.5-3 血清補体価 (CH50) 測定
16 実習免疫学実習.6-1 SLE疾患モデルマウスの解析 (抗核抗体の検出)
17 実習免疫学実習.6-2 SLE疾患モデルマウスの解析 (抗核抗体の検出)
18 実習免疫学実習.6-3 SLE疾患モデルマウスの解析 (抗核抗体の検出)