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コース名称: 医学教養 (2022年度)

科目名称: 医学教養Ⅱ (2022年度)

科目責任者三井 石根
科目対象学年1~3 科目授業期間春学期 科目時限数15 科目分類講義

科目について

【宇宙医学】
 2020年11月、野口飛行士を乗せた民間宇宙船「クルー・ドラゴン」がISS(国際宇宙ステーション)にドッキングした。これは、今まで国家レベルで先導されてきた宇宙開発が、本格的に民間の手に移った記念すべきミッションであったとも言える。今後、月周回軌道を回る宇宙ステーション「ゲートウェイ」を足掛かりに「月面基地」や「火星への有人飛行」を視野に入れる「アルテミス」計画など、近未来の宇宙ミッションは目白押しの状態にある。
2021年度中には、月面へ降り立つミッションを前提とした新たな日本人宇宙飛行士の募集も始まる。
 このような中で、地球という環境を離れて宇宙空間に進出したヒトの体に、地球とは異なる重力・気圧・磁場・放射線・光・温熱などの物理ファクターが如何なる影響を及ぼすのかについて、宇宙医学を「深海から宇宙まで」つながる環境医学の一分野としての視点から解説する。
 また、日本の惑星間探査機「はやぶさ」が持ち帰った「りゅうぐう」の岩石サンプルが2021年度中には始まり、生命の起源にも迫る結果が期待されている。地球の生命がどこで生まれたのか、そして地球上で進化してきた人類はこの先どこでどのように進化を進めていくのか。そのような疑問に対して、アストロメタバイオロジーの視点から解説する。

【航空医学】
 航空搬送の急速な拡大に伴い、航空旅客数が急増している。航空機内は地上の環境と異なり、低圧・低酸素・騒音・気密性などにおいて、人体への影響が生じやすい環境でもある。航空性中耳炎やエコノミークラス症候群など航空医学的な知識を有していれば防ぐことのできる疾患から、急速減圧への対処など生死にかかわるレベルまで、航空医学全般について解説する。
 本学は、日本の拠点空港としての羽田空港から最短距離に位置する医学部として、ひとたび羽田空港で大規模航空災害が発生すれば多くの患者が救急搬送される。また羽田空港には本学が運営する空港クリニックが存在し、本学卒業生が診療する機会も考えられる。そのような際に、航空医学領域の知識を身に付けているか否かは、正確な診療を行う上での重要なポイントとなる。また、感染流行地からの旅客に伴う検疫やパンデミックへの対応などにおける航空医学の役割についても理解を深める。
 更に地球環境全般において、近年の激しい気候変動が甚大な災害をもたらしている中で、航空宇宙医学を深海から宇宙へと続く環境変化に対応する医学と位置づけることで、今後一層加速化する環境の大変動に医学の面から如何に対応していくべきか、その問題意識の萌芽につなげる。

【課題に対するフィードバック】
毎回の講義の中で理解度を増すためのショートクイズを出題し、これに対する詳細な解説を加える。ショートクイズは、その内容を理解すれば本ユニットの目標とするレベルが達成できるように作成されている。

受講前に必要とされる知識及び技能・態度

航空宇宙医学という領域は、おそらく受講者全員が初めて接するテーマであると考えられるため、特に事前に要求される知識や技能はないものの、できれば高校レベル程度の物理・化学における素養があることが望ましい。
受講前の準備や予習より、むしろ講義中に示されたショートクイズを十分に理解し復讐することを勧める。各回のショートクイズは、本講義のアウトカムが十分達成できる内容となっている。

科目の評価について

評価項目

1.講義時の態度
 欠席・遅刻の回数により受講放棄とし、期末試験の出席を制限する。この場合には自動的に単位の取得はできない。
 講義中にスマートフォンを使用したり、講義の進行を妨げるような私語を認めた場合には、退席を含む措置をとる場合があるので、注意を促したい。
 講義に際してタブレットやPCの使用は認めるが、講義に関係のない内容の作業や検索等が判明した場合には、上記と同様に対処する。

2.ショートクイズ
 講義の際に講義内容に関連した小問を示し、解答後に解説を加える。このショートクイズは自己採点とし、それに対する評価はおこなわない、。
 
3.期末試験
 各回のショートクイズをまとめたものを中心にして期末試験を課す。本ユニットの評価は、基本的にこの期末試験の点数のみをもっておこなう。
 期末試験は100点満点とし、60点以上を合格とする。
 場合により講義中に中間試験を行うこともある。その場合には中間試験と期末試験の配分を3:7とし、両者の合計の60%以上を合格とする。

指定教科書他

参考図書

1.「宇宙航空医学入門」藤田真敬(鳳文書林)2015 ISBN978-4-89279-425-4 3400円+税
  日本航空宇宙環境医学会監修の航空宇宙領域に関する入門書。認定医講習会の内容をコンパクトにまとめている。

2.「ヒトは宇宙で進化する~無重力とからだの不思議な関係~」三井いわね(ポプラ社)1999 ISBN4-591-06225-2 1400円+税
  本ユニットの科目担当者による執筆。ポプラ社から学童向け「21世紀知的好奇心探求読本」シリーズの1冊として出版されたが、宇宙医学の様々なテーマが夢
  のある構成で語られている。

(指定教科書は、現在編集中の下記備考欄記載の書籍が出版された場合において新たに指示する)