領域名称: 生体の機能1 (2023年度)

領域責任者赤羽 悟美

領域について

 疾病の病因・病態・治療を理解する上で礎となる人体の正常機能について、1年次の領域『生体の機能1』および2年次の領域『生体の機能2』で学ぶ。正常機能についての深い知見(基礎医学知識)を身に付けることは、臨床医学を履修するために必要であり、臨床医学を深く理解するための貴重な財産となるものである。さらに、生命の理の学びを通して科学的探究心を育み、自ら課題を見出し知識を収集し問題を解決する姿勢を身に付けることは、より良き臨床医として生涯に渡り学修と研鑽を積む態度の涵養に繋がる。
           
 『生体の機能1』領域の学習目標は、人体の正常機能とそのしくみについて学ぶことである。人体を構成する基本的な生命単位は細胞であり、それらが集まって臓器を構成する。細胞の生存には、細胞外環境(内部環境)からの物質供給や老廃物の除去が必須であり、それらの物質を体外から摂取したり排出するしくみが必要である。                        
 
 生体の機能1-1では、細胞の基本的な構成要素とそれらの機能について学び、細胞内外の物質交換機構と情報伝達機構を学び、神経・筋の生理学的基礎を理解する。                                         
 生体の機能1-2では、血液・リンパ系および呼吸・循環系の生理学を学ぶ。細胞外のイオン環境や浸透圧を維持する仕組みを学び、細胞の生存に必須の酸素を外界から取り込み、細胞へ供給し、細胞の活動により生じた老廃物を回収するしくみを理解する。さらに、外界からの侵入異物を排除する仕組みを理解する。                               
 生体の機能1-3では、腎・尿路系、消化・吸収系、内分泌・生殖系の生理学を学ぶ。細胞の生存に必要な物質を外界から取り込み老廃物を排出し、各臓器の働きを調節することにより、細胞外の環境(内部環境)の恒常性を維持するしくみを理解する。
 
 【医学教育モデル・コア・カリキュラムの該当項目】
 A医師として求められる基本的な資質・能力
 C医学一般
 D人体各器官の正常構造と機能、病態、診断、治療
 

領域の評価について

 領域『生体の機能1』を構成する全サブ領域のGPA評価がグレードC以上である場合、『生体の機能1』領域が合格と判定される。

サブ領域名称: 生体の機能1-① (2023年度)

サブ領域責任者赤羽 悟美

サブ領域について

生体の機能1-1では、細胞の基本的な構成要素とそれらの機能について学び、細胞内外の物質交換機構と情報伝達機構を学び、神経・筋の生理学的基礎を理解する。

本サブ領域は下記のユニットから成る。
① 細胞生理
② 神経・筋  

【医学教育モデル・コア・カリキュラムの該当項目】
C-2個体の構成と機能
D-2神経系
D-4運動器(筋骨格)系

ユニット名称:[MM602-101J]細胞生理(2023年度)

ユニット責任者赤羽 悟美
ユニット対象学年1 ユニット授業期間1期 ユニット時限数10 ユニット分類講義

ユニットについて

本ユニットの目的は、細胞の基本的な機能(細胞膜、受容体、情報伝達、物質輸送、膜電位、興奮性)を理解することである。
生体は、細胞間で情報を交換することによって細胞・組織・器官の機能を調節し恒常性を維持しながら生命を営んでいる。細胞間の情報交換は、細胞膜を介するイオンの移動、伝達物質の受容体への作用、細胞接着などの相互作用などによって担われている。
血清中の電解質組成の変化は神経細胞や心筋細胞など興奮性細胞の機能を障害し、生体の死をもたらすことがある。伝達物質の遊離、代謝や受容体の機能などの阻害は、病態・疾患をもたらしたり、診断・治療手段としても用いられる。近年、分子生物学、生物工学、情報科学などの進歩によって、分子レベルの知識が急速に増加しつつある。したがって、生体の細胞間情報伝達機構の基本原理を学ぶことは、正常人体の機能のみならず臨床医学領域の理解・把握に必須であり、十分な理解が強く要求される。

本ユニットは、1年Ⅰ期に系統講義とし10時限実施する。本ユニットでは、まず細胞膜の構造と機能、細胞間の情報伝達、細胞内外のイオン組成の違いがもたらす意義について概説する。次いで、神経細胞および骨格筋細胞を具体例として、情報伝達の基本原理を講義していく。神経細胞の基本的構造、細胞膜の興奮、活動電位の発生機序・特性、伝導様式、伝達様式などについて概説し、膜電位、チャネル、トランスポーター、受容体、細胞内情報伝達機構について、これらの情報伝達の機能を支える分子の異常がもたらす病態や治療法にも触れながら理解を深める。

講義において、講義内容の理解を深める目的で問題提示や小テストを行うことがある。その場合、授業の中で解答について議論し解説を行う。
さらに、講義終了後にオンライン学修ツールを用いた復習テストを提供し自学自習を促す。

医学教育モデルコアカリキュラムの該当項目: C-2-1)-(1), C-2-1)-(2), C-2-3)-(1), C-2-3)-(2)


【実習】
細胞生理学に対応する実習は、1年次Ⅲ期に「生体の機能1実習」として実施する。

【準備学修】
講義聴講前に各講義項目に該当する教科書の頁を読んでおくこと(約 30 分)。
具体的な教科書の該当箇所については、講義の前に事前配布資料やGoogle Classroom等で周知する。

受講前に必要とされる知識及び技能・態度

本科目を受講するにあたり、リメディアル科目、医学教育準備科目および基礎医学科目(医用理工学、生体物質の科学、生体の構造)における十分な知識を習得しておくことが必要である。

ユニットの評価について(フィードバック含む)

ユニット単独での合否判定は行わず、サブ領域『生体の機能1-1』として判定する。                  
各ユニットの評価は、論述式・多肢選択式の筆記試験の点数に基づいてGPA評価で提示する。
1つのユニットの成績が60%以上であっても、サブ領域の評価がグレードD(60点未満)の場合はサブ領域の再試験を受験しなければならない。
また、40%未満のユニットがあった場合、サブ領域最終評価は不合格となり、再試験を受験しなければならない。                                                               
本試験はⅠ期末に、再試験はⅢ期末に実施する。再試験不合格者は、年度末の最終試験を受験できる。               
本試験および再試験のいずれに対しても追試験は行わない。  


【定期試験に対するフィードバック】
試験の評価を開示した後に『解答の手引き』を配布する。
評価の開示から3日後までのオフィスアワーに試験に関する質問に対応する(ただし時間が限られているため不合格者を優先する)。          

指定教科書他

【推薦教科書】
下記の推薦教科書のうち、いずれか1冊を選び講義の予習・復習に活用すること。
1) ガイトン生理学 原著第13版 電子書籍(日本語・英語版)付き(エルゼビア・ジャパン)2018年 ISBN 9784860347741
2) 生理学テキスト 第8版(著)大地陸男(文光堂)2017年 ISBN 978-4-8306-0229-0
3) ギャノング生理学 原書25版(丸善)2017年 ISBN 978-4-621-30188-3
4) 標準生理学 第9版(医学書院)2019年 ISBN 978-4-260-03429-6
5) 人体の正常構造と機能 改訂第4版(日本医事新報社)2021年 ISBN 978-4-7849-3181-1

授業日程一覧(ユニット名称:細胞生理) (2023年度)

コマ数形態授業タイトル
1 講義細胞生理1 細胞膜の構造と機能
2 講義細胞生理2 細胞間情報伝達
3 講義細胞生理3 受容体機構
4 講義細胞生理4 生理学序論: 内部環境と細胞内外の物質輸送
5 講義細胞生理5 ドナン効果・電気化学ポテンシャル・平衡電位
6 講義細胞生理6 膜電位の基礎および等価回路
7 講義細胞生理7 静止膜電位の発生機序
8 講義細胞生理8 イオンチャネルの構造と機能
9 講義細胞生理9 活動電位の発生機序
10 講義細胞生理10 興奮の伝導
評価生体の機能1-①(10:00~11:30・2実)
評価生体の機能1-①(再)(10:00~11:30・3実)
評価生体の機能1-①(最終)(10:00~11:30・2実)